WEB・アプリ開発

スタートアップは狂ってないとできないというのはほんと?

日本のインターネットにかかわる起業をする人達には大きく分けて二つの種族がいると思っている。そのうちの一つの種族の人々が語るある言葉について偏見たっぷりに考えてみた。

スタートアップ族とネットビジネス族

一つは「スタートアップ族」。

アメリカでいうY Combinatorに準ずるような日本のVC(ベンチャーキャピタル)が出資をしつつメンタリングも行い、2〜3名の創業者でデモデイを目指してリーンでアジャイルな開発をして、サービスをスケールさせていくのを狙うような種族である。

成長とともにさらなる資金調達で企業規模がどんどん大きくなる。

イノベーティブなプロダクトを創って、新たな市場を創生するのを理想としている。いわゆる意識が高い人達である。学歴も高い人が多かったりする。使っているパソコンはほぼMac。

もう一つは「ネットビジネス族」。

今の時代「ネットビジネス」ときくと、どこか2000年代初頭の香りがする。しかし、この種族の人達はこの言葉を今でも普通に使う。

副業から始まり、独立してもほとんどが個人事業主だが、稼いでいる人は税金対策のため法人成りする。ほとんどは一人で活動する孤高の人たちであり、ネット上でオープンに実名で活動する人は少ないので、一般にはあまり存在を感じられていない。使っているパソコンは最近は多少Mac勢も出てきたが、ほとんどはWindows。

ビジネスモデルは、アフィリエイトや転売など、プログラミングスキルが必要ないものである。

スタートアップ族の人が漏らすあの言葉

私はスタートアップ族に所属しているが、最近はネットビジネス族にも足を突っ込んでいる。

スタートアップ族の人達から、「起業なんて狂ってなきゃできない。」という言葉を何度か聞いた。そして自分もそう考えていて、自分も狂っているんだ、と思っていた。

だが、ネットビジネス族の人達からはそのような言葉は聞いたことがない。むしろ「ネットビジネスなんて本気でやれば誰でもできる。」という意見が多い。

なぜこんな違いがあるのだろう。

スポンサーリンク

スタートアップ族は一発勝負

いわゆるスタートアップは数百万円レベルでシード投資を受ける。起業家はその金額を前提に考えるし、投資家もその金額に見合うプロダクトを期待する。

となると、ビジネスとしては、双方向的な投稿だったり、ユーザー管理だったり、課金だったり、というような機能を持つレベルのシステムになり、Railsなどのちゃんとしたフレームワークを使うことになる。最近ではiOSアプリやアンドロイドアプリもつける前提だったりする。

この規模のソフトウェアになると、数百万円の資金でも足りないレベルになるし、数ヶ月かかったりする。なので、創業者にコードが書ける人がいて開発費を抑えるのが前提だったりする。

もちろんユーザーの反応を見ながら、微調整を繰り返す事は可能だ。だが、マーケット自体を変えたり、機能を大幅に変えるようであれば、それまでに作ったコードベースはゴミ箱行きとなる。

なので、スタートアップ族は一発勝負的な傾向が強くなる。

それに対して、ネットビジネス族はどうだろうか。

アフィリエイトについて言えば、無料ブログから始めることが可能だ。色んなタイプのブログを何百個作っても無料である。そのなかの一つでもヒットすればそれを拡張して記事を増やしていけばいい。
独自ドメインでサイトを運営したい場合は、数万円のサイト作成ツールさえ買っておけばプログラミングスキルがなくてもサイトをすぐに作成できる。

なので、アフィリエイトなら、色んなタイプのサイトを大量に作ることが可能であり、何度も挑戦して検証することが可能だ。

そんな技術的には大したことない簡単な静的HTMLのサイトだけでも、月に数百万円稼ぐネットビジネス族もいたりする。

こういう違いから、一発勝負的な傾向を感じ取っているスタートアップ族の人達だけが「起業なんて狂ってなきゃできない。」という言葉を使うのだと思う。

両種族がうまく融合できないだろうか

そんな一発勝負傾が強いスタートアップ族だが、成功した時の見返りは非常に大きい。2〜3年でユーザー数がある程度伸びていれば、多少赤字でも大手に買収されて、創業者には数億から数十億入ったりする。

実際にはネットビジネス族がやっているサイトのほうが、PVも利益もあるケースもあるだろう。でも、ネットビジネス族は表に出てこない人が多く、スタートアップの「キラキラ感」がない。なので、大手企業が買ってみようかと思いづらいんだと思う。

どうすれば両種族のいいとこどりができるだろうか。自分の案は二つ。

一つは、スタートアップ族が、出資を受けた直後から、ネットビジネス族化し、プログラミングという神聖な武器を捨ててちまちまとサイトを量産することかな。

とはいえ、これは出資を受けたさいにプレゼンしたビジネス案をいきなり変えずらいので、VCからの視線やつっこみを気にしない鋼の心は必要になる。

もう一つが、ネットビジネス族が作ってうまくいったサイトをうまくキラキラ感を演出してあげること。普段表に立ち慣れていない人が無理やり全面に出るという荒療治な感はあるけど、やってみたら面白いかもしない。