ここ数ヶ月、怒涛のように芸能スキャンダルが報道されています。普段ゴシップには距離を置いているつもりでしたが、驚きでしばらく仕事の手がとまってしまうこともしばしばでした。
スキャンダルそのものも衝撃的でしたが、なぜこのようなスキャンダルが相次いでスクープされるのか、ということ自体も気になりませんか?
ストレスを抱えた現代人がわかりやすい「いけにえ」を探しているといった説もありますが、わたしは、根本的な原因として、芸能人の公務員化があるとみています。
もちろんこれは芸能人がどこかの役所に勤めているとかそういう話ではないですよ。公務員みたいになってきたということです。
もくじ
なぜスキャンダル報道が増えているか
数の増加は、
- スキャンダルの数自体が増えた(報道されるかどうかは別として)
- スキャンダルのメディアによる報道数が増えた
のどちらかまたは両方で説明できますが、わたしは2がメインだと考えています。
芸能人(もちろん一般人も)は昔も今も一定数、人に言えないことをしている人はいて、その数はそんなに変わりません。しかし、それをとりあげようとする報道が増えたということです。
なぜ以前にはしていなかったような報道をメディアはするのでしょうか。
当たり前ですが、それは売れるからです。テレビであれば視聴率がとれます、広告主からより多くの広告料をもらうことができます。WEBメディアも同じで、閲覧者数に応じて広告料が入って来る仕組みになっています。
ではなぜこのようなスキャンダルが以前に比べて売れるのでしょうか。
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芸能人のイメージ戦略と実際の人物像とのギャップ
ベッキーさん、ショーンKさん、乙武さんに対して、誠実、まじめ、インテリジェンス(頭がいい)といったイメージを持っていた方は多いのではないでしょうか。
そして、この誠実、まじめ、インテリジェンス、というのは、現在の芸能人の鉄板ブランディング(イメージ戦略)になっていて、意図してそのような戦略をとっている人も多くなっているのではないでしょうか。もちろん本人が意図していなくても、事務所が戦略をたてていることもあり得ます。
例えば、決して悪いことではなく良いことなのですが、チャリティ活動に励んだり、討論番組で政治や社会について語る芸能人も多いです。
また、学歴を過度に誇張したクイズ番組には、お笑い芸人さんさえ出ています。
こちらも悪いことではないのですが、家族を大事にしてることをアピールしたりするシーンも見受けられます。
で、誠実、まじめ、インテリジェンスという3つの特徴って、まさに公務員のかたをイメージするときと同じなのではなでしょうか。
30年前の芸能人には、このようなことはなかったはずです。芸人さんやとがった俳優さんなどであれば、そのようなことはむしろマイナスのイメージだったはずです。
なので、不倫してるといってもイメージ通りだったりして、ギャップがなくて報道しても大して騒がれないし、売れなかったということです。
30年前のテレビだと、インテリジェンスを発揮する人は、超硬い評論家風のおじさんくらいで、それ以外はわいわい面白いことをしてるにーちゃん、ねーちゃん、といった感じだったと思います。
しかし、最近の芸能人は身近なお兄さん、お姉さんなんだけど、インテリで誠実でまじめというのが求められている感じです。でも、実際の人間は時代が進んだからといってそんなに変わらないんですよね。
なので、芸能人に対して視聴者が描くイメージと実際の人物像のギャップが、以前に比べて大きくなってきているのです。
メディアにとっては、そのギャップがスキャンダル報道のうまみとなります。
視聴者にとってみれば、不倫そのものよりも、そんなイメージ全然なかったじゃん。なんか騙された、という感情からの批判が多くなります。商品でいえば、「宣伝文句と実際の商品全然違うじゃん!」というクレームです。おそらく、ふだんからちゃらいイメージで売っている人なら、不倫が発覚してもそこまで騒がれることはないはずです。
たしかに、多くの視聴者はその「まじめな芸能人」に対して、「えっ、こんなに素晴らしい心の持ち主がいるんだ!」という思いで好意を抱き、その番組を見る時間を割いているのです。(番組を見てCMを見せられるというのは決してただではありません)その前提が違っていたとなれば、「なんだよ!だまされた。」と思う気持ちも理解できます。
なぜ公務員的特徴が求められるのか
二つの原因があると考えています。
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視聴者の保守化
テレビ視聴者の高齢化により、やはり当たり障りのない芸能人が重宝されるようになっている傾向があります。
タブーに触れたりせず、場の空気を壊さず、時々賢そうなコメントを残せる人です。
政府によるメディア介入と既得権化
最近、政府はメディアへの介入の動きを見せています。
「公平な報道をするように」との文書を各放送局に送りつけたり、高市総務相の「電波停止」発言によく現れています。
自民党だけが介入しているようにも見えますが、別に民主党政権時代に全くなかったわけでもないはずなので、総務省の役人が強い影響を与えているように見えます。
もちろん、公平な報道をすればいいだけなのですが、基本的に役所は減点方式で評価します。なので、変な番組を放送をしていると揚げ足を取られて、最悪電波停止などのペナルティをくらいたくないため、メディアは無難な番組にするということです。
テレビ局の社員は平均年収が1,500万円とも言われています。電波停止にされてしまえば、そんな生活も終わってしまいます。
話しは変わりますが、インターネットができたのが1990年頃です。なので、ネットは26年たっていることになりますが、ネット業界にはまだまだ新しいことをやろうというベンチャースピリットがあります。
テレビでビジネスがうまくいくことがわかったのは1950年代半ばくらいです。力道山とかが出ていたころですかね。で、30年前の1980年代というのは、まだテレビビジネスが生まれて30年くらいしかたっていません。なので、まだテレビ局にベンチャースピリットがあったと考えられます。
ですが、60年たってしまった現在は、確実に儲かる既得権になってしまっていて、リスクをおかして何かをしようという気概は失われてしまっています。
(あと30年くらいしたらネット業界も同じようになるかも)
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スキャンダル当事者は誰に謝ればいいのか
お前何様感がありますが、結構この議論も分かれているので、ちょっと考えてみました。
世間に謝れ、という人もいるし、謝罪したって意味がない、なぜ謝るのか、という意見も結構あります。また、ベッキーさんには「相手の奥さんに謝れ」といった意見もよく聞きました。
乙武さんは自身のサイトの謝罪文の最後に、
妻や妻のご両親、3人の子どもたちに心より謝罪し、またこれまでの仕事や活動のなかでお世話になっているみなさまに深くお詫び致します。
と書いています。
川谷さんは自身のライブで
ネットとかでみんな『謝れ』って言うけど、世間のだれに謝ればいいの? 内輪での話だからみんな関係ないじゃん
と言ったとされています。
ベッキーさんは川谷さんの奥さんに謝りたい、と言っているとされています。
さて、一連のスキャンダル当事者は誰に謝罪するべきなのでしょうか?
たしかに川谷さんがいうように、別に関係者以外に迷惑をかけていないようにも見えます。
自分も世間というわけのわからんものには謝罪する必要は全くないと思います。
ですが、ここまで騒がれているのは、なんらかのダメージを受けた人の反動です。つまり、「宣伝文句と違うじゃん!」という気持ちです。芸能人が発するイメージ戦略と違うじゃん!ということなんです。そのイメージが事務所やメディアが作ったものであれ、実際と違うのであれば修正する責任は本人にあるし、本人にしかできません。
勝手にそう思い込んだんだ、というケースもあるかもしれませんが、それが何万人もいるのであれば、「勝手に」というのは通らないと思います。
ショーンKさんの場合はわかりやすく、宣伝文句と実際が違っていました。
ですが、不倫の場合、「私は不倫をするようなタイプです。」というメッセージを普段から発しなきゃだめなの?という反論を受けそうです。ですが、そういうことになります。
今のテレビでは、まじめ、誠実といった浄化されたイメージで売り出さざるをえないので、それがいやならテレビに出れないということになります。
なので、謝罪する対象として最もすじが通るのは、イメージ戦略を信じてその芸能人の作品を買ったり番組を見る時間を割いた人です。それ以外の人には謝る必要はないと思います。
もしかしたら、川谷さんのファンにはイメージと違うじゃん!と感じる人は少ないかもしれません。その場合はファンに謝る必要はないですが、ベッキーの番組を見ていた人でベッキーに対するイメージについて、「イメージと違うじゃん!」という人がいそうです。そういう人たちに対して、川谷さんとベッキーは共同で、そういう感情を抱かせたことになります。
川谷さんの上の発言や、ショーンKさんの発覚後の「そんなにわるいことしたかな?」というコメントからもわかるように、事務所やテレビ局が関わっていて自分でもどのようなイメージで売っているのかわからなくなっているというのはあるかもしれません。ですが、そのイメージを信じた人にとってみれば、事務所やテレビ局は関係ないのです。
なので、事務所やテレビ局ではなく、本人が謝らないと意味がありません。それとともに、事務所やテレビ局が、勝手にイメージをつけてしまったスキャンダル当事者に謝るということは、必要かもしれません。
組織ぐるみであれば、その当事者だけ悪かったというのは、とかげの尻尾切りですからね。