ウォルター・アイザックソンが書いた「スティーブ・ジョブズ」を読みましたので学んだことを中心に感想をお伝えします。また、ジョブズが影響をうけた禅仏教などの東洋思想の本もご紹介します。
もくじ
感想
公式の伝記なのに、ジョブズをけちょんけちょんに批判している部分もあるのが驚きだった。「こんなものガラクタだ!」と社員や取引先に言ったり、不要な人間をどんどん解雇するなど、冷酷な部分が隠すことなく書かれていた。
とはいえ、里親、産みの親への愛、家族への愛など、人間らしい部分もあることがバランスをとっていた。
ビジネス的な面でいうと、技術と芸術を結びつけて偉大な功績を成し遂げた彼の考え方の由来がしっかり記載されているのが参考になった。
勉強になった点
禅の影響
ジョブズは永平寺に行きたくなるほど禅に傾倒したが、導師に止められる。その時のやりとり。
日本の永平寺に行こうと考えたこともあるけど、こちらにとどまれと導師に言われてやめた。ここにないものは向こうにもないからって。彼は正しかった。師を求めて世界を旅する意志があるならすぐ隣にみつけるだろうと禅ではいうんだけど、それは正しいんだなと実感したよ。
集中力もシンプルさに対する愛も、「禅によるものだ」とジョブズは言う。禅を通じてジョブズは直観力を研ぎ澄まし、注意をそらす存在や不要なものを意識から追い出す方法を学び、ミニマリズムに基づく美的感覚をみにつけたのだ。
日本の禅は、ジョブズも読んだ「禅マインド ビギナーズ・マインド」の著者、鈴木俊隆や知野弘文(乙川弘文)を通じて学んだ。
直感やクリエイティビティを重視
100人のアーティストから成功しそうな5人を直感的に選んだりするのだけれど、テクノロジーの会社はそういう”直観力”を信じないんだ。そして、クリエイティブな人は1日中ソファでぼんやりしている怠け者だと思っている。
アイデアを大切にするジョニー・アイブ
スティーブは一瞬で判断してしまうので、ほかの人がいる前で新しいものは見せないようにしています。「こんなのガラクタだ」と宣言してアイデアを殺してしまう可能性があるからです。アイデアというのはとても壊れやすく、大事にあたためてあげる必要があります。このアイデアはとても大事で、これをスティーブが切り捨ててしまうのは悲しい事態だと思いました。
デザインへのこだわり
ジョブズはもともとソニーのようないかにも工業製品といったデザインが好きだったが、国際デザイン会議に参加し始めた1981年あたりから、イタリアのスタイルに傾倒する。
映画「ヤング・ゼネレーション」で若者がイタリア製のバイクにはまったように、僕もイタリアのバイクにまいってしまった。すごいインスピレーションだったよ。
その後バウハウスのデザインが好きになっていく。
ジョブズは「苦行とミニマリズムがのちの感動を高めるという人生哲学」を持っていると娘のリサは気づいていた。
すばらしい収穫は粗末なものから生まれる、喜びはがまんから生まれる、と父は信じていました。物事はその反対へ振れるという、ほとんどの人が知らない法則を理解していたのです。
法人向けのビジネスが嫌い
あれは僕が望む仕事ではなかった。個人に製品を売れない状況に、本当に気が滅入ってしまった。法人向けのエンタープライズ製品を売ったり、誰かが作ったぼろいハードウェアにソフトウェアをライセンスするためにこの地球に生まれてきたんじゃない。ああいう仕事がおもしろいとはどうしても思えないんだ。
ユーザー体験を重視
「Think Different」のキャンペーンの考え方。
焦点をあてるべきは、コンピューターになにができるかではなく、コンピューターを使ってクリエイティブな人々はなにができるかだ。
「テーマはプロセッサーのスピードやメモリーではなく、創造性だったんだ。」
店舗の製品別レイアウトの間違いをロン・ジョンソンが指摘した時、
製品を中心にするのではなく、人々がしたいことを中心にレイアウトすべきだというのが彼の考えだ。
とジョブズも支持した。
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共食いを恐れるな
事業同士の共食いを心配するソニーに対して、
ジョブズは”共食いを恐れるな”を事業の基本原則としている。「自分で食わなければ、誰かにくわれるだけだからね。」
完璧主義
よくない部分があったとき、それを無視し、あとで直せばいいというのはダメだ。そんなものはほかの会社がすることだ。
という。最近流行りのリーンスタートアップとは全く違う考え方だと思った。
ビートルズのストロベリーフィールズフォーエバーの修正を繰り返すテープを聞いて、アップルの物作りとの共通点を語るジョブズ。
このバージョンは全然洗練されていない。これを聴くとビートルズも単なる人間だったんだって思うよ。
みんな完璧主義者で、とにかく何度も何度もやり直すんだ。このことに、僕は30代で強い印象を受けた。彼らがどれほど真剣に取り組んだのかがわかってね。
アップルでの物作りも、同じような方法を取ることが多い。
たたき台を作ったあと、それを改良して改良して、デザインやボタンや機能など、細かなモデルを作るんだ。大変な作業ではあるけど、繰り返すうちにだんだんとよくなり、最後はこんなのいったいどうやったんだ!?ネジはどこに行った!?って具合になるんだ。
意外にも顔を付き合わせた話合いを重視
ネットワーク時代になり、電子メールやiChatでアイデアが生み出されると思われがちだ。そんなバカな話はない。創造性は何気ない会話から、行きあたりばったりの議論から生まれる。たまたま出会った人になにをしているのかたずね、うわ、それはすごいと思えば、いろいろアイデアがわいてくるのさ。
市場調査に頼らない製品開発を重視
「顧客が望むモノを提供しろ」という人もいる。僕の考え方は違う。顧客が今後、何を望むようになるのか、それを顧客本人よりも早くつかむのが僕らの仕事なんだ。ヘンリーフォードも似たようなことを言ったらしい。「何が欲しいかと顧客にたずねていたら、『足が早い馬』と言われたはずだ」って。欲しいモノを見せてあげなければ、みんな、それが欲しいなんてわからないんだ。だから僕は市場調査に頼らない。歴史のページにまだ書かれていないことを読み取るのが僕らの仕事なんだ。
文系と理系の交差点
文系と理系の交差点、人文科学と自然科学の交差点という話をポラロイド社のエドウィン・ランドがしてるんだけど、この「交差点」が僕は好きだ。
アップルが世間の人たちと心を通わせられるのは、僕らのイノベーションはその底に人文科学が脈打っているからだ。
レオナルド・ダ・ビンチやミケランジェロなどはすごいアーティストであると同時に科学にも優れていた。ミケランジェロは彫刻家のやり方だけでなく、石を切り出す方法にも詳しかったからね。
本物の会社を作ることを重視しビジネスの売却を嫌悪
スタートアップを興してどこかに売るか株式を公開し、お金を儲けて次にいく。そんなことをしたいと考えてる連中が自らを「アントレプレナー」と呼んでるのは、聞くだけで吐き気がする。連中は、本物の会社を作るために必要なことをしようとしないんだ。それがビジネスの世界で一番大事な仕事なのに。
その他にジョブズに影響を与えた作品
東洋思想系
大学時代にサイケデリックドラッグの作用や瞑想について影響を受けた本。
インドで借りた部屋で、前にいた人がたまたま置いていったこの「あるヨギの自叙伝」。生涯にわたって繰り返し読むことになる。
菜食主義に導いた本
- 「無粘液食餌療法」アーノルド・エーレット
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ジョブズが愛した音楽
- ジョーン・バエズ(一時期ジョブズの恋人になる)
- エラ・フィッツジェラルド
- ウィンダムヒル
晩年にiPadに入っていた映画
ただし、トイストーリーなどのピクサー系は好きで当然なので除外。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
この本から、ジョブズの思考回路が学べるフレーズをまとめてみました。そして本の中で言及されている、そのような思考回路にいたるのに影響したと思われる作品もご紹介しました。これらを読んでいけば、さらにジョブズの思考回路に近づけるのではないかと思います。
「スティーブ・ジョブズ」は1、2巻あり、結構重いのでKindleで読むのがおすすめです。